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PENTAX K10D

 
 
  
                   PENTAX K10D

    


勝手にインプレッション

エンゾーにとって、*istDs、*istDs2に続いて3台目となる、お仕事用デジタル一眼レフ。*istシリーズでコケたペンタックスが、「売り切り必達前提の限界価格」をひっさげて文字通り背水の陣で投入した中級機である。

当時、ペンタックスの経営不振は深刻で、デジタル専用レンズのラインナップの遅れや、*istDL・DL2といった場当たり的な派生モデルの乱発などで自らの首を絞め、舵が壊れた船のように方向性を見失い彷徨っていた。おそらく社内の危機感は相当高かったものと思われる。
銀塩末期から続いていた「*ist」というシリーズ名を廃し、往年のユニバーサルマウント(あるいはかつての高級機Kシリーズ)にちなんだ「K」に変更したところに、ペンタックスの並々ならぬ覚悟が伺える。

さて、まさに社運を掛けて世に送り出されたK10Dは、撮像素子のゴミをふるい落とすダストリムーバル機能、ボディ内手ブレ補正機能(シェイクリダクション)、防塵防滴構造など、中級機として必要と思われる機能をすべてその身に詰め込んだ、非常に良く練られたボディだった。しかも、実売価格が他社のエントリー機とさほど変わらないレベルに抑えられていたため、事前に製品情報のリークが始まると、その完成度の高さとコストパフォーマンスの良さに予約が殺到し、生産が追いつかずに発売時期が延期されるほどの反響を呼んだ。

発売後もその評価は変わらず、特に海外では好意的に受け入れられ、ついには世界の三大カメラ賞である日本の「カメラグランプリ2007」、ヨーロッパの「TIPAベスト・エキスパート・デジタル一眼レフカメラ2007」「EISAヨーロピアン・カメラオブザイヤー 2007-2008」をすべて獲得するという、前人未到の快挙を達成した。
余談だが、これにちなんで「グランプリ・パッケージ」なるものを売り出してしまうあたりは以前とちっとも変わっておらず、ペンタックスも懲りていない。

  
  (毎度思うことだが、なんというか、独特なセンスだ)

実用機としてのK10Dは、かなり満足度が高い。ガラスペンタプリズムを採用し、クリアで大きくて見やすいファインダー像が確保されているので、まず覗いて気持ちが良く、「撮る気」を起こさせてくれる。これはカメラとしてなくてはならない資質である。バッテリーの持ちが良いのは相変わらずだ。
フォルムは良くも悪くもオーソドックスで、アクのないデザインとなっている。やや大柄なので、その分ホールディング性は良好だ。
手ブレ補正の効果は絶大で、ブツ撮りやロケなど、手持ちでの撮影領域が確実に広がる。これは非常にありがたく、「どのレンズも有効に使える」というシステム全般に対する信頼性向上にも一役買っている。

また、従来の*istDシリーズまでとは一線を画する画質は、ただの1000万画素機ではない素性の良さを感じる。デジタル臭の少ない、端正な絵作りだ。

ただ、不満がないわけでもない。まず、暗所でAFが遅く、迷う。銀塩時代から比較すると遥かにキビキビ動いているが、それでも現在発売されている他社のボディには劣後する。この辺の「AFが弱いペンタックス」という構図は相変わらずである。

さらに使い倒していると次第に気になってくるのが、ピントの甘さだ。ファインダー上では合っている様に見えるのに、パソコンのディスプレイで確認してみると後ピンだったりする。どうもこの傾向は他のユーザーも感じているようで、しかもレンズや個体によって前ピンだったり後ピンだったりするようである。
オプション機能で、微妙なピント位置のセッティングの変更が出来るようになってはいるが、うっかりいじると「このレンズでは良くなったがこのレンズでは悪くなった」などという改悪にもつながりかねず、(事実、そのような事例はネット上で多数報告されている)簡単には調節できないのが実情だ。

また、暗所でのノイジーな特徴はやや目立つ。画像処理ソフトでヒストグラムを持ち上げると、黒の中からワーッとノイズが浮いてくるのには閉口する。こういったところはキヤノンやニコンに全く太刀打ち出来ていない。これは結構深刻な問題で、デジタル光学機器では高感度側の絵がどこまで実用に堪えるかが勝負の分かれ目になるので、早急に改善を望みたいところである。

ペンタックスは、K10Dの発売後にHOYAへと吸収合併され、ブランドは存続するものの、2008年3月末で、ペンタックスという社名が消滅する運びとなった。旭光学時代からのファンにとって、これは衝撃的な事実である。ミノルタ、コニカ、コンタックスに続き、ついにペンタックスまで…。時代の流れとはいえ、生粋の光学屋の看板が消えていくのは、なんともやるせない。

また「今後ペンタックスは、プロ用機材の開発からは手を引く」という趣旨の声明も発表された。これは「ウチはレンズも含めて、中判もフルサイズも作りませんよ」と言っているわけで、多くのオールドファンを落胆させた(フルサイズが2000万画素時代に突入した今、中判デジタルをやめたのは英断だと思うが)。中~長期的な目で見たとき、今からフルサイズの開発をやめてしまうということは、他社との競争を放棄し取り残されることを意味する。そんなブランドに先があるのだろうかと非常に不安だ。

もともとHOYAは、合併後はカメラ事業を切り捨てるというプランを持っていた(後に撤回)会社なので、K10Dが撤退前の最後の打ち上げ花火などにならぬよう、株主に対し「ブランドは存続させる」と表明した約束は、必ず守って欲しいものだ。





長所

○*istDシリーズで培ったステンレスシャーシの完成度が高く、非常に剛性が高い。
○とにかく見やすいファインダー像。このためだけにK10Dを選択する価値がある。
○縦横に絞り値やシャッタースピードを変化させることが出来るハイパーマニュアルは、デジタルでも健在。
○防塵防滴や手ブレ補正など、ひとつひとつの機能が良く練り込まれていて隙がない。

短所

●これでもう一回り小さかったら…。
●ピントが甘いカット(後ピン傾向?)がある。
●ダストリムーバル機能の効きは、過信し過ぎないほうが良い。
●暗部のノイズが結構多い。ニコンやキヤノンとはえらい違い。


超個人的オススメ度(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ 

偏愛度(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆

Yahooオークション出現率(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆

*トータルバランスとしては間違いなく名機。自信を持ってお勧めできる。

 
 



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